ヴェポライザー用ポーレンプレッサーの製作
更新履歴
- 2019/02/18:記事初出
- 2019/02/22:タイトル修正
1.目的
1-1.ヴェポライザーの喫煙は意外と手間が掛かる
煙草葉が使える「電子パイプ」であるヴェポライザーだが、パイプ喫煙以上に準備や片付けが大変である。適度に加湿したシャグを準備し、それをヒートチャンバーに詰めている間もポロポロ零れて散らかる。3分~10程度の喫煙時間しか持続せず、喫煙後はチャンバーから硬く炭化した煙草葉を尖った細いもので掻き出す。チャンバー内径は小さく指が入らない事が原因だ。
手巻き煙草ならば予め巻いておきシガレットケースに入れて持ち運べるのだが、かと言って折角巻紙という異物が不要なヴェポライザーなのに、やっぱり手巻きしたものを吸わなきゃならないのか・・・。
1-2.ポーレンプレッサーというものがあるらしい?
喫煙具ネットショップを眺めてみると、ポーレンプレッサー(Pollen Presser=花粉圧縮器)というものがある。呼び方は色々あって、煙草コンプレッサー、煙草圧縮器、煙草プレッシャー、煙草圧縮成形器など。
柘製作所のカタログにも記載されている。
たばこプレッシャーS - パイプ喫煙に必要な小道具 | 柘製作所
たばこプレッシャーM - パイプ喫煙に必要な小道具 | 柘製作所
たばこプレッシャーはパイプたばこやシャグを固形のクランブルケーキにするための道具
固形にした後、“どうやって”パイプ喫煙に活用するのかは書かれていない。
粉状にしたハーブを押し固めるのに使うようだが、合法な国ではヘンプ樹脂を成形する為に使うのだろうか?日本では主に煙草葉か、ハーブティー用に売っているドライハーブを圧縮するような使い道だろう。
1-3.煙草ペレットを作ろう
原子力発電所の原子炉で使われる燃料棒にはウラン燃料ペレットが沢山詰め込まれているそうだが、ヴェポライザーにおいても煙草葉の扱いを楽にするため煙草樹脂を成形してみる。これを「煙草ペレット」と呼ぶことにする。このアイディアは既にヴェポライザー界隈では試みられているようだが、まだ主流ではないようだ。
考えられる利点
- 喫煙前のチャンバーへ詰める作業の際、散らかりがちな煙草葉を何とかしたい。
- 喫煙後の煙草葉排出作業をスマートにしたい。→シャグポンしたい
- 大量の煙草葉を充填することにより喫味と喫煙時間を向上させたい。(Davinci IQのセッションタイム10分を最大限活用したい)
- ペレットサイズにより煙草葉の量を定量化させ、逆に喫味と喫煙時間をコントロールしたい。
- ペレット状態に密に成形することにより、外側が乾燥しても内側は湿度が保たれていると期待する。
- 逆にペレット状態でも加湿調整できるかな?
煙草ペレットが使えそうな機種
ペレットに圧縮成形すると空気の通る隙間が無くなってしまうので、熱対流式(コンベクション)は対応できないと考えられる。つまり熱伝導式(コンダクション)専用ということになる。
手持ちの熱伝導式はWEECKE C-VAPOR2とC-VAPOR3、そしてDavinci IQだが、C-VAPORとDavinci IQはチャンバー内径が異なるため、対象をDavinci IQに絞ることにした。
ペレットサイズ
Davinci IQのヒートチャンバーを測ると、おおよそ内径Φ10.5mm、深さ15mmぐらいだったので、煙草ペレットはΦ10mm・長さ15mmを目標とする。
ペレットの工夫
熱伝導式ヴェポライザーとは言え、完全にチャンバーを塞いでしまうとドローできなくなるはずなので、ペレット中心に貫通穴を通す中空構造とする。中心付近からも加熱されることを期待すると共に、煙草葉の使用量を節約する目的もある。Φ3mmの中空構造では計算上は9%の節約となる。
煙草の銘柄
2.結論
2-1.成功した点
- 成形時間は圧縮後5分ぐらいでも固まる。加湿気味であれば圧縮後すぐに固形化した。煙草葉の加湿状態、刻みサイズ、そして加圧荷重に依存する。
- 煙草グラインダーで細かくしたパイプ煙草は成形可能。
- アメスピのような乾燥したシャグでも十分に加圧すれば成形可能。
- 密度が高く、ペレット外側から徐々に加熱される為か、風味も徐々に出てきて柔らかい喫味に感じる。セッション開始3分経過時点では十分加熱しきれていない様子。
- フレーバーチャンバーに蒸気を溜めながら吸うと良い。
- セッション2回目(10分~)は風味が飛んでいるものの、蒸気は出ておりニコチンも感じられる。
- パイプ煙草ペレットは1セッション目はキツくて咽せてしまうが、2セッション目の方が柔らかく吸える。
- ヒートチャンバーへのペレット装填が簡単(入れシャグポン?)
- 喫煙後のペレット排出が簡単(シャグポンできた!)
- 喫煙後のペレットは葉が開いているが、外径は膨張せず、長さ方向へ膨らんでいる様子。
2-2.失敗した点
- 過加湿の煙草葉は圧縮時に水分が出てきて作業しづらい。漬物のように滴が垂れてきたが、溶けたニコチンも流出していると思われる。
- 刻みの太いパイプ煙草もそのまま成形してみたが、押出し(離型)作業中に折れた。保管中にも葉が開いて外径が膨らみ、ヒートチャンバーへ装填中に形崩れした。
- 中空穴の無いペレットは、チャンバーぴったりの外径にしてしまうとクリアランスが無くなって空気が通らずドローできない。(後述) しかし加熱が進むと葉が開いてドローできるようになった。勿論シャグポン不可。
- 過加湿のペレットはヴェポライザー加熱中、ジュウジュウと沸騰音が鳴り、水蒸気が出すぎる。(というか熱い滴が上がって来る) 蒸発に熱量を取られるのか電力消費が多めな気がする。
- 長いペレットはマウスピース側(煙道)に水分が上がってくるので掃除が大変になる。
- 喫煙後のペレットはチャンバー下側(カバー側)が生焼けで、完全に炭化していない。長いペレットは下側の熱の廻りが良くない。
2-3.試してみたい点
- ペレット圧縮成形する際、外に漏れないようVAPEリキッドを添加しながら煙草葉を充填すると、着香できるかも?
- 複数の銘柄をブレンドしたペレットが作れるかも?
- 長いペレットを成形しようとせず、短めのペレットをチャンバーに何個か装填する方が使い勝手が良さそう。
3.製作したポーレンプレッサー
3-1.外観
4点の部品を製作した。殆どは既製品で一部加工した。材料代は合計約¥800円程度。材質は全てPOM(ポリアセタール)で、色はナチュラルの乳白色だが、汚れが見やすいので好都合。割れやすいものや腐食に弱い樹脂では圧縮加圧に耐えられないし、金属では鉄臭などの金属臭が煙草葉に移る可能性があると考えた為。
上の写真の通り全て円筒形で、上の大きな筒状のものが「ダイス」となり内径10mmである。ダイス内径でペレットの外径サイズが決まる。下の長さ違いの2本は「上・下パンチ」となり外径10mmである。これでペレットを加圧する。右側の細長い棒はΦ3mmの軸で、ペレットに中空構造を作る為のもの。
上の写真はピンボケだが、「上・下パンチ」は逆向きにするとΦ3mm軸を通す為の穴が無い。こちらを使って加圧すれば中空構造の無い(中実の)ペレットが成形できる。
上の写真のように軸とパンチと組合わせてダイスへ入れる。
3-2.煙草ペレットを成形してみよう
1.ダイスへ「下パンチ」(短い方)と軸をセット
2.煙草葉を投入
パイプ煙草はグラインダーで細かくした方が良い。
3.「上パンチ」で軽く突き固めながら更に煙草葉投入
ここでVAPEリキッド等を2滴ほど添加すると、ひょっとして風味を作れるのではないかと想像している。(まだやっていない)
4.「下パンチ」を外してみて圧縮できているか確認
煙草葉の形が整っていれば、このまま加圧する。
5.クランプをスタンバイ
従来のポーレンプレッサーもネジで回転力を荷重(推力)に変換しているが、アルミや黄銅製のネジ山では摩耗に耐えられない。ここが最大の弱点で製品寿命となる点である。ホームセンターのクランプコーナーに行くと、鉄製の「シャコ万力(G型クランプ)」があるが、重い上に過大なクランプ力で扱いづらい。そこで「アルミG型クランプ」を購入した。間口75mmサイズで¥448。安くて軽いがメネジもアルミなので耐久性はシャコ万力の方が上のはず。なので今回は消耗品と割り切る。
6.圧縮成形開始!
加圧時間は試行錯誤中。5分ぐらい待ってみたり、加圧後すぐに取り出してみたり、余り違いは分からない。
- 適度に加湿されていると成形後の形崩れが少ない。
- 過加湿だと圧縮時に水分、多い場合は滴が出てきて作業しづらい。
- 煙草葉の大きさは細かい方が成形密度を上げられ、重くて固く締まったペレットになる。
7.ペレット取り出し(離型作業)
クランプを外して上パンチを押し出していくとペレットが出てくる。しかし、成形時に加圧荷重を強くしすぎていると、ペレットが固くなりすぎて離型性が悪く、手で押し出すのに苦労する。パイプ煙草そのままでは、この時点で崩れてしまった。
8.成形したペレットがコチラ
これはパイプ煙草のキャプテンブラックをグラインダーで細かくして成形したペレット。長さは約8mm。狙った長さにするのは結構難しい。周囲にバリ(薄いヒダヒダ)が出来ている原因は、パンチとダイスのクリアランス(内外径差)が約0.3mmあるから。加圧荷重が強いほど、このクリアランスに煙草葉が逃げてしまい、バリがどうしても出来てしまう。クリアランスを攻めるには加工精度を上げて嵌め合い公差にするしかないが、樹脂では難しいので金属で製作するしかない。
3-3.喫煙開始とシャグポン・ポン
結果的に、シャグポン投入→喫煙→シャグポン排出が出来た。つまり「シャグポン・ポン」である。
色々ペレット成形してみた。写真の下の2つはアメスピ・ペリック、上の2つはキャプテンブラック。特に右上は中空穴無しのペレット。
Davinci IQのヒートチャンバーに装填。この通りポンと入る。前シャグポンである。
2本喫煙してみた。1本あたり2セッション計20分喫煙し、いずれもシャグポンできた。後シャグポンである。
左上は輪切りにしたもの。右下は縦に切断したもの。加熱されると煙草葉が開いてドローが軽くなってくる。ペレットは外径方向ではなく長さ方向に膨張するお陰で、シャグポンできたと推測する。中空構造を保ったまま、中まで黒くなっているが、チャンバー下側だった部分は未だ茶色く生焼けになっていた。加熱しきってないのかもしれない。
4.まとめ
目的は概ね達成できた。
- 部品代はGクランプ含めて合計¥1,300円程度だった。(追加工もしたが)
- 成形ペレットになったことで煙草葉の持ち運びが簡単になった。
- ヒートチャンバーへの喫煙前の装填作業や排出作業が簡単になった。(シャグポン・ポンの実現)
- 通常使うより多くの煙草葉を圧縮成形することにより、熱伝導式に限るが、喫味が濃くなり、喫煙時間が伸びた。
- カットが太くて硬めの葉も混じっているパイプ煙草もペレットに成形できるので喫味の幅が広がる。(グラインダーで細かくする必要があるが)
5.今後の課題
- 崩れづらくて喫味の良いペレットを成形するには、やはり煙草葉の加湿調整が重要。特に過加湿は圧縮作業にNG。
- 加圧荷重は強すぎても離型性に問題ありそうだが、喫味の変化など、バランスが良く分かっていない。
- 長さの揃ったペレットを成形するには、狙った加圧荷重で狙った寸法に持って行く必要があり、今回のツールでは厳しい。
- C-VAPOR3に装填したらペレット外径が大きく、無理に詰め込んだ。勿論シャグポン排出できず、掻き出した。中空ペレットならばドローと喫味は良い。
6.謝辞
今回の製作には下記お二方の記事が大変勉強になりました。感謝致します。該当記事を下記に載せておりますが、問題あれば御連絡下さい。
うまおじさんの記事
コンプレッサー - うむ美味いおじさん ヴェポライザー レビュー
Graphicker'sさんの記事とポーレンプレッサーのレビュー動画
【ヴェポライザー】一緒に出よう、シャグ探しの旅#015 番外編 Vaper press for DaVinci IQ コンプレッサー【シャグ】 - YouTube
以上